ビーツの酢漬けをつくる季節、鳶色に毒づいて見えるが、料理の味をまろやかにする。
私の仕事場に20年ぶりに顔を出した女性、ビーツ色のセーターを着て昔の話に花が咲いた。
銀座のママの自負心は、身の引け時に迷いながら、店によく飲みに来る人と結婚し、店をたたみ、内助の功も終焉となり、満足げな顔をしていた。
石井遊佳『百年泥』を読みながら、母が認知症になり始めた頃、インドのガンジス河を眺めながら、次はガンガーに母の遺骨を撒きに来ると決めていたことを思い出した。
誕生月の10月、毎年友人が飲みに来るので、垢抜けないバースデーケーキを用意して待つ。
ヨットに乗っていた頃の友人は、船内で生活していたようなものなので、ヨットの家族だった。
『万引き家族』を観て、家族について考えながら歩いていたら、満月が深々としていた。
インドとバングラディシュの国境あたりで、テントからお爺さんも赤ん坊も犬も鳥も一列になって出て来たことがあり、その一列が蒸栗色の月に向かって昇っていくのをみたのだった。
|