平成20年6月号
六本木ミッドタウンを歩いていたら、ヨットレースに狂っている友人に会った。
その真っ黒い顔は、「今、このビルの28階で働いてるんだけど、そろそろリタイアしようと思うんだ!?」、
彼は東京近郊の土地1000坪を相続し、海の近くで気ままな生活を送る計画があるらしく、誇らし顔で白い歯が「児玉さん、こんど新しいクルーザーに招待するよ」。私は最近ヨットに乗ると船酔いをする。

もう一人、うかない声の電話「昔の事で忘れてたんだけど、友達に頼まれて出資した300万円が100倍になったんだ、それで香港に移住することにした」。
専門学校で隣の席だったM君、裕福な環境なのに当時から倹約家だった。
大金が転がって、趣味の倹約が楽しくなくなるじゃないかと思う。
池澤夏樹の『スティル・ライフ』を読みながら思う。億万長者は人生が長すぎる。

毎朝、東工大のキャンバスを通り抜けて仕事場に行く、近所の人しか知らない石川神社で「おきつねさん」に
お早うと云う、お昼は書類に埋もれながら玄米のおにぎりを食べる。充実した日々が流れていく。
20代前半に漠然と信じていた事、その時の自分に戻って暮らしていたい。
児玉 智子
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