平成29年11月号
毎週末、母の施設に行くとき、童謡の歌詞カードを持っていく。
昨年は全員揃って唄っていたのに、耳が遠くなったり、身体が萎縮したり、いま歌声は母と私だけ、母はほかの歌を唄う、秋らしい光景。

事務所の斜向かいに「ありまさ」という蕎麦屋があり、味噌もベーコンも手作り、魚と野菜は、夫婦ふたりで三浦に行き、仕入れてくる。
いつも「ユキ・アリマサ」のジャズピアノが流れ、アリマサにぞっこんのふたりが、ライブを開催した。
ライブ会場は、近くの音楽スタジオ、ピアノの音が骨の髄まで伝わり、なぜか5月に死んだ犬のことを思い出し、涙と鼻水が流れた。
ジャズは、小さな空間にかぎる。

耳も目も悪い、気弱な老犬が膝の上でいびきをかき、ひざ掛け代わりの体温が伝わる季節になった。
児玉 智子
令和
2年
令和
元年
平成
31年
平成
30年
平成
29年
平成
28年
平成
27年
平成
26年
平成
25年
平成
24年
平成
23年
平成
22年
平成
21年
平成
20年
平成
19年
平成
18年
平成
17年