午前3時に「かんちゃん」が唸りながら、頭をグルグル廻し、霊が乗り移ったようにも見え、暫くすると、左側の口元だけ、よだれが、流れ出ている。
右側だけで床を這いずる姿に、「犬の車椅子を探さなくては」と思った。
左半身のマヒは、数日のリハビリで直り、顔は少し左に傾き、利口な顔つきとなり、下萌えの季節は、ちょっとしたことに、幸せ感を得られるようになる。
太宰治『親友交歓』を読みながら思い出す。
六本木の不動産業全盛のころ、夕方になると、羽振りが良い社長を訪問し、毎日ただ酒を飲み、タクシーで社長を送ると云いながら、タクシーを最初に降りる素早さが見事な人がいた。
宴会を盛り上げ、社長を褒め上げる技は一流、行方不明だったその人を、自由が丘駅のホームで見かけ、サンダル履きに、よれた紙袋をぶら提げている。
できるなら、楽しそうな顔つきで、一生ただ酒を飲み続けて欲しかった。
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