平成29年8月号
炎昼は、「月山よもぎ冷麦」と「ブルーベリー最中」で蘇ってくる。
人生には彩りが大切だ、と独り言を云いながらも、この15年は彩りがまったくないし、これからもモノクロの生活が続くのだろう。

練馬区立美術館に、加賀谷雅道『放射線像展』を見に行った。福島原発事故で大量の放射線物質が大気中に放出され、音も臭いもなく見えないものを意識することは難しいが、浪江町や飯舘村で汚染された植物や手袋の、三次元放射線像は美しくて不気味だ。

涼風をうけて歩く千川通りは、新築の明るい色の住宅が多く、思い出した土の匂いとは違う。
事務所を始めて間もないころ、この地の地主だった女性から相談があり、中村橋にあるお店に行った。
孫のために開店したコンビニは廻りが畑で、土の匂いがしていた。
店の前には、当時にしては不自然に広い駐車場があり、ファイヤーバードと翼竜のような2台の車が停まっていた。
老女からの相談は、この車をお店の経費にする方法で、若かった私は、話に腹を立て、その場を離れた。

今そこは、25坪程度に区割りされ、イケメンの不動産業者が新築住宅の内覧会をしていた。
川越通りから見えた、不自然に大きな月は充血した色をしていて、その孫は今どうしているんだろうと思った。
児玉 智子
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