平成30年8月号
3年目にして初めて、ノウゼンカズラは花をつけ、心細いうすいピンクの花は、自分が葛であることに、迷っているのだと思う。
小さな苗を買ったとき、周りの植物を蔓で締め上げ、濃いオレンジの花を咲かせる、その強欲な姿を見たかった。

大磯の鴫立庵で句会があり、脳天に西日があたり、藪蚊が耳朶にとまり、藁葺きの由緒ある俳諧道場で、上手い句を捻り出せずにいた。
小学校のとき大磯ロングビーチに近い海岸で溺れそうになり、母親に曳行されたことを思い出し、その借りを今、返しているのだと思った。

逝ってしまった西部邁『蜃気楼の中へ』は、温度がある日記のようで、ゆったりしている。
敗戦のあと、西部少年は札幌近郊の厚別原野辺りで日本軍が残した火薬で遊び、占領軍の物資を盗み出した気分になり、パンパンと呼ばれていた女性がアメリカ兵にぶらさがり軽蔑したものの、娼婦がペニシリン軟膏を調達してくれ、西部の妹の大やけどが助かった。
18ページに「権力に寄生するものが権力の言葉を喋ることができ、それによって被征服者たちに恩恵をほどこしている。」戦争の被害がほとんどなかった北海道にいて、おぼろげに思ったこと。
児玉 智子
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