平成30年7月号
この季節の朝は忙しなく、クチナシの花を洗面器に浮かべ、山椒の実を採り、ちりめんじゃこを炊き、新生姜の甘酢漬けをつくる。
部屋いっぱい、クチナシの香り漂い、梅雨を爽快にしてくれる。

中上健次『千年の愉楽』のオリュウノオバになり代わりながらも、気が重くなり、藤岡陽子『手のひらの音符』を読み終わり、梅雨が明けたような清々しい気分になった。
団地で育った水樹は、母親の内職でバービー人形の洋服作りをしていて、その手伝いをしながら大人になった。
服飾デザイナーとなり、一生懸命働いていた会社は、服飾業から撤退すると、社長から聞かされる。

市井の生活は不動産や株の時価に関係なくても、その人の生きる道や心の持ち方に大きく影響する。
バブル崩壊後に社会に出た若者に「寝ないで働けば社長になれる」と云ったところで、社長になれば幸せになれるとは誰も思っていない。
自分探しの旅は、こころの拠りどころを見つける旅で、今頃になって再び、永遠に続きそうな気がしてきた。
児玉 智子
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