仕事先の会社やクリニックで、そろそろ仕舞う時期が来ていると思うと、遠まわしに提案するものの、「死ぬまで働く」とか「他にしたいことがない」などと云い、家族は「家にいてもらっても困る」、従業員からは「この会社はどうなるのか」と質問される。
内館牧子『終わった人』を読んでいると、腹を震わす笑いがベットを揺すり、老犬が慌てて目を覚ます。
主人公の銀行員は、出世レースに取り残され、家庭からも見捨てられる物語は、日本が好景気で世界のビルを買い捲っていた時期に、働き盛りだった日本男性と家庭を守る妻の分業体制が出来た時代でもあった。
今の若者は、そんなことが幸せだと思っていないし、無駄な夢をもたない。
読み終わり、その足で映画『終わった人』を観れば、隣のおっさんは煎餅をばりばり食べ、後ろの親父さんの高鼾が聞こえ、まさに「終わった人」が観客で、夫婦連れの観客の穏やかな笑い声に、積み上げてきた時間の共有と重みが伝わってくる。
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