平成30年5月号
私は、母の最期に「おかあさん、私を産んでくれてありがとう。」と思えるため、自己犠牲はしないと決めているが、中上健次『岬』や福島次郎『現車』を読めば、血の繋がりが人生そのものだと感じる。

高橋一清『中上健次、芥川賞誕生秘話』に感銘し、作家は担当編集者に育てられていることが判る。
『岬』の校正作業での表現は、秋幸が血族のしがらみから心を解き放たれるとき、路地に立つ一本の樹を描写すること、しかも根元から視線をあげて、枝葉から空へと放つこと。
9回の手入れで受賞した中上は、ひとしきり泣きじゃくり、「一清さんが、初めて俺を人間あつかいしてくれた」
とつぶやいた。

彼が病院を見舞った日は、中上の生涯で最も好きだった兄が、庭の木に綱をかけ、首をつった日であり、これが、別れの日となり、5ヵ月後に旅立った。
児玉 智子
令和元年 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号
平成31年 1月号 2月号 3月号 4月号
平成30年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成29年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成28年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成27年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成26年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成25年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成24年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成23年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成22年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成21年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成20年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成19年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成18年 1月号 2月号 3月号 4月号 5月号 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号
平成17年 6月号 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号