糸川糸『ライオンのおやつ』を読み、純粋な気持ちで泣けた。
母のいるグループホームに毎週顔を出し、私の下手な篠笛をみんな喜んで聞いてくれ、とても有り難いけれど、入居者の老化が眼に見えてすすみ、生きていることが怖くなる。
怖すぎて、真っ暗な池上本門寺の階段を駆け上がったら、武蔵小杉の高層建物がちらちら光り、読経が腹に響き、寒さを忘れてしまった。
朝早く平塚美術館に行けば、三沢厚彦の「ユニコーン」が出迎えてくれる。
この地域は海軍火薬廠があったところで、住むのに適さず、美術館のまわりに工場が多いが、湘南の日差しが眩しく、海風が心地よい。
福田美蘭「見返り美人」を見るつもりが、石井礼子の和紙に割り箸と墨で描く生活風景が力強く、絵が眼に焼きつき、美術館のテラスで食べるしらすピザ、しらすの目玉が気になって、喉につかえるような気がした。
石井礼子さんは昨年若くして亡くなり、遺族から寄贈された作品群、絵だけはずっと生きることができる。
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