平成31年3月号
午前1時に、17歳の愛犬が穏やかに逝った。
ベットで抱えて寝ていると、寝息が聞こえなくなり、抱き起こすと、首が折れるように力なく、天にいっしょに昇っていけそうな気がした。
母が施設に入り、介護は母から老犬二匹にとって代わった。
毛がなくなり、目玉は白くなり、腰がぬけ、醜さが増したとしても、愛おしさが深まることを経験した。

逝く早朝に雪が降り、又ひとつ宝物がなくなり、私は出せるだけの声にして泣いた。
韓国のお葬式の列で、泣き喚いていたときのことのように。

明日から忘れる、犬は居なかった。
重たいカメラとレンズを「国境なき医師団」に寄付し、自分の宝物を捨てていくことが人生だと実感し、旅の予定をたてる。
児玉 智子
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