夜中に、母からの電話で「智ちゃんから預かった鶏が、何処を探しても居ないの」と云う。
私の返事も「何言ってんのよ!子供のころ、お祭でヒヨコを買ってきたけどカラシが付いてるサンドイッチを食べさせたら、すぐ死んだわよ」ガチャン、とそっけないもの。母は昔、庭で鶏を飼っていたことがあるそうだ。
夜半に母の愛犬が遠吠えをするので窓から覗いてみると、庭にパジャマ姿で立っている。
そんな、こんなで、レンドルミンを投与してみる。
薬効があるのか無いのか、「梅がきれいな伊豆に温泉旅行に行こう」などと云って様子をみる。
0. 25㍉を半分に割って飲ませても、寝ながら「犬はどこにいるの、ここはどこなの、家がなくなった」を繰り返し、こんなに疲れる温泉旅行は始めての経験だ。
高齢者のシャルル・ボネ症候群は認知症状を伴わない幻視で、独居高齢者に多いという。
人間は生き続けながら自分の存在理由を自問自答している。なかでも視覚的根拠は大きく、脳の視覚路に傷などがあると、それを補うための「書き込み」が行われ、右目と左目がお互いの盲点を補い合っている。
誰でもが経験したことしてないことが混在し記憶は書き換えられ、脳が推測したものを知覚し、夢の中で生活しているとすれば、澱んでいない夢のなかで生活したい。
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