思い出してみると50歳過ぎたころ、修論で「黄金町の変遷」を書上げたことが、その後の仕事に役立っている。仕事をフィールドワークに見立てると、対処する際に、大きく捉えることが出来るようになった。
底冷えする修論発表会の日、母が徘徊し、家から居なくなり遅刻、担当官に怒鳴られ、結果は惨憺たるものだった。
鈴木涼美『AV女優の社会学』は、インフォーマントとの接触の難しさを超越し、業界の運営方法やヒエラルキーについても調査が行き届いている。
「あとがき」に、「子供ながらに、バブルも、はじけた空しさも、冷めた目で見ることを強要されてきた、私たちは資本主義の申し子で、値段のつくものに人がむらがる」と述べている。
その後、本人がAV女優であったことが週刊誌を賑わせた。
「売春は魂が傷つく」という考えに同意すると書していたが、すべての経験を吸収する強さを持ちあわせている学者、これからどのような研究をしてゆくか楽しみだ。
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