前近代から病気とその治癒は自然界、科学・薬学の世界を超越したところ、神と悪魔の宇宙的戦いにあるという考えがある。
17、8世紀、カトリック諸国において教会が、そのような祈願の場であったが、迷信を排除するプロテスタント国のイギリスでは、そのような祈願や呪術は地方に残る遺物だった。
しかし王政復古後は名だたるニセ医者が多く、医療技術のみならず占星術のわざをも伝授していた。
当時のさまざまなニセ医者は尿診断の技術を誇り、患者の尿を診ることで診断をくだし、予測した。
患者自身を診なくても、尿の入った容器を召使が届けることができたので実用的であったが、尿診断以外の医術をなにもしなかったので、後にいかさま医療の烙印を押されるようになった。
前近代のイギリスは健康への関心が高く、ニセ医者の宣伝ビラには診療する疾病に急性疾患やペスト、天然痘、チフスを退治するとは書かず、「悪い体質から生ずる病気の治療にピッタリおあつらえむきの薬『奇跡の丸薬』」などと広告、一両日中に死んでしまいそうな重病人の治療はさけた。
ニセ医者の意味を考える。Doctorには「ごまかす」という意味があり、患者の要求や相談に対処する場面で
誤魔化すことが必要なこともある。ニセかどうか、これは患者それぞれが判断すればいいことだ。
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