何時か来ると思っていた母の夜中の徘徊が始まった。
宮古島で「かん高い」と言われていたお婆さんの眼つきを思い出しながら、テレビのリモコンを入れた、犬の模様がついたビニール袋をさげ、中原街道まで突進する。
私は右足に革靴、左足にサンダルで追いかける。
掴んだ腕を追い払い、「犬が一匹居なくなった、あんたもいっしょに探してくれないと困る」と捲し立て、歩き廻るのに付き合い、息が切れたのを見図らって、「サア、帰ろうか」「アンタねえ、私だって辛いんだ」。
翌朝は、ワンタンとコロッケを旨そうに食べる。
交番に、写真付き「深夜徘徊することがあります」を持参すれば、お爺さんが心細い顔つきで、家族の迎えを待っていた。
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