平成30年7月号
大岡山と学芸大学に、お気に入りのパン屋があり、奥まった処で、粉を頬っぺたにつけ奮闘する女の子を応援したくなり、冷凍庫がパンでいっぱいなのに、買いたくなり、売切れているとほっとする。

湿度が高い雨の日に、島尾敏雄『死の棘』を暗い気分で読み、その時代背景を知りたくなった。
妻ミホ『海辺の生と死』は奄美ことばで語られ、南島の暮らしに、ゴーギャンのタヒチの女を思い浮かべ、嫉妬で狂う人とは遠い、ゆったりした時間の流れを感じる。
加計呂麻島に、特攻艇部隊を率いてやってきた敏雄は、出撃命令が下ったものの、昭和20年8月13日の夜、待機命令のまま終戦を迎えた。
島のミホと隊長は、戦局の悪化ゆえ恋心が深まり、命がけの上京、その結婚生活は、島で尊敬された隊長さんから生活力のない夫へ、文学仲間との女性の情事を知ることで、妻の狂乱が始まる。
ミホがノロの家系であることを関係づける著作もあるが、ミホはクリスチャンであり、「カン高い」人に精神疾患者が多いともいわれている。

岡田美術館で、田村一村の赤しょうびんの唐辛子色の嘴の絵を観て、ミホの顔がうかんできた。
児玉 智子
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