職人わくわく - Wakuwaku Workman -

−平成30年10月号−

近所の美味しい豆腐屋は静かに閉店してしまったが、雪谷大塚の昭和3年創業『あらいや』だけは、活気がある。
家業として、アカギレしたふやけた手で豆腐作りに励み、家族全員が二階で住込みする時代は終わった。
『あらいや』は美味しいものばかりで、季節のがんもは茸、シフォンケーキは青森のよもぎ、半月形の揚げ豆腐、持てるだけ買い物をして、豆腐が高級食材だと気がつく。

ラッパの音が聞こえると、アルミの鍋を持って外に飛び出す光景は、耳を澄ますことが身についた。
アイスクリーム屋さんの鈴の音を、聞き逃さないように待っていた頃、毎日の生活にほのかな楽しみがあった。