職人わくわく - Wakuwaku Workman -

−平成27年9月号−

蝉時雨ふる炎天下、東松山の田圃にひっそり、美術館がある。入り口で「殆んどの絵は、アメリカにいっていますが、いいですか?」と聞かれ、私だけいる美術館は古い扇風機の音が響いていた。
菊次郎写真展が併設されていたので、そのアサヒグラフのような写真を静かに観たかった。
広島出身の丸木入里は原爆投下後の惨状を《原爆の図》で表現した、昆布だしや豆腐と同じくらい、入里の水墨画が好きだ。
広島資料館の展示品のおぞましさを思い出しながら、《アウシュビッツの図》の前で寝転んでみた。
天井のヤモリが、この美術館の主だと判り、なぜか母親に、水ようかんを持って行きたくなった。